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季節と共に生きる日本の伝統 「二十四節気七十二候」春編

季節と共に生きる日本の伝統 「二十四節気七十二候」春〜初夏編

日本にはいくつの季節があるかと尋ねられたら、あなたはなんと答えるでしょうか?

正解はもちろん春夏秋冬の四季…なのですが、実は正解はそれだけではありません。

四季をさらに細かく分けて、より季節の移り変わりに寄り添う考え方が、古来の日本にはありました。

今回は日本に古くから伝わる季節の呼び名「二十四節気七十二候(にじゅうしせっきしちじゅうにこう)」を解説し、生活に取り入れる楽しみ方をご紹介します。

昔の日本人が、春4月をどんな風に呼んでいたかも詳しく知っていただけます。

日本古来の季節の捉え方「二十四節気七十二候(にじゅうしせっきしちじゅうにこう) 」とは

二十四節気

二十四節気について

二十四節気というのは、1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つの「気」という期間に分けた区切りです。

昔の暦は太陰暦を使っていたため、太陽の位置と暦の日付の関係に次第にズレが生じていました。

そこで季節に寄り添った二十四節気を使うことにより、生活に必要な季節感を保つことができていたとされています。

二十四節気と言われてピンとこなくても「立春」「啓蟄」などの言葉は殆どの人が知っていて、意識せずに使っているでしょう。
これらは元々二十四節気から来た言葉ですが、現代の暮らしに引き継がれています。

七十二候について

七十二候は、約15日間の「気」をさらに3つに分けて、それぞれの時季を象徴する自然現象や風物などを表現する呼び名を付けたものです。

七十二候では、5日間というとても短い期間で季節を区切っているため、その季節ならではの自然現象や風物が繊細に表現されています。

例えば立春の旧暦のお正月である立春(2月4日頃)は「東風解凍(はるかぜ こおりをとく)」「魚上氷(うお こおりを いずる)など。

秋の始まりの立秋(旧暦8月7日頃)は「涼風至(すずかぜ いたる)」「寒蝉鳴(ひぐらし なく)」など。

どの呼び名も、季節の情景を美しく表現し、その時季ならではの情緒が伝わってきますね。

日本の季節感を繊細に表現する二十四節気七十二候は、元々は季節に応じて農耕作業をすすめるための実用的な目安でした。

最近では、昔ながらの季節感をより楽しむための切り口として見直されています。

「春」4月にはどんな呼び名があるの?

現代の私たちにとっての4月は春真っ盛りというイメージですが、旧暦の4月は「晩春」にあたります。

季節のおとずれに敏感で、少し先取りするのが粋…というのが昔の日本人の感覚だったのでしょう。

4月の前半(4月4日頃)からの約15日間は「清明(せいめい)」と呼ばれます。
「清らかで明るい」という、いかにも春らしい名前ですね。

4月の後半(4月20日頃)からの約15日間は「穀雨(こくう)」です。
「穀物に実りの雨が降り注ぐ」という意味です。春の長雨の別名でもあります。

燕が来て雁が帰り、虹が現れる季節

玄鳥至(つばめ きたる)

「清明」はさらに
「玄鳥至(つばめ きたる)」
「鴻雁北(こうがん かえる)」
「虹始見(にじ はじめて あらわる)」

の3つの候に分けられます。

南の国から燕が飛来し、農耕の季節の始まりを告げる。

燕と入れ替わるように、雁が群れをなして北国に帰っていく。

冬の間乾いていた空気が潤んでいき、雨の後に虹が現れるようになる。

候の名前をつなげるだけで、詩のような一連の情景が浮かんでくるようです。

葦が生え苗が出て、牡丹が咲く季節

牡丹華(ぼたん はなさく)

「穀雨」は
「葭始生(あし はじめて しょうず)」
「霜止出苗(しも やんで なえ いずる)」
「牡丹華(ぼたん はなさく)」

に分けられます。

水辺の枯れ草の中から葦の小さな緑色が芽吹き、朝も霜が降りなくなり、苗代では苗が育ち、田植えの準備が忙しくなる。

百花の王とされる牡丹が花開き、春たけなわとなっていく…。

芽の小さな緑から始まり、百花繚乱の春のフィナーレを迎えるという、ダイナミックな盛り上がりが感じられますね。

春の「旬」の楽しみについて

春、4月が旬とされる魚介と野菜などをご紹介します。

春の旬

サザエ

サザエは日本の巻き貝の代表格で、古くから宮廷や神宮にも奉納されてきました。シンプルな壺焼きは夏の浜辺のイメージですが、春から初夏にかけての旬の時季にはお刺身も人気です。

サザエという名前は「小さい家」を表すと知ると、なんだか可愛らしく思えてきます。

「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」という江戸時代の俳句にもある通り、春から初夏にかけては初鰹の季節です。

近年では脂の乗った秋の戻り鰹が人気ですが、4月下旬頃から伊豆半島周辺で獲れる初鰹は、脂が少なく江戸っ子好みの一品でした。

トビウオ(アゴ)

西日本で「アゴ」とも呼ばれるトビウオも、春が旬とされています。

大型のものはお刺身や、独特のにおいで有名な「くさや」に使われます。

そして煮干しは深く上品な味わいの出汁が、近年では西日本だけでなく全国で人気です。

胸びれを翼のように広げて海面を滑空するトビウオは、なんと時速70kmで約300mも飛ぶことができるそうです。

桜海老

桜海老の名産地、駿河湾では3月〜6月が春の漁期です。体長4〜5cmの透明感ある体に、淡い紅色が透けた海老が浜辺で天日干しされている景色は、まさに満開の桜のようです。

旬の桜海老はタンパク質が豊富なだけでなく、カルシウムやリンなどの無機質もたっぷり。

干した桜海老は通年食べられますが、シンプルな釜揚げを大根おろしとともに頂くのは春ならではの楽しみです。

ワラビ・コゴミ

ワラビは別名「早蕨(さわらび)」と呼ばれ、早い春の到来を告げる代表的な山菜です。クルンと丸まった若い芽を摘んであくを取り、おひたしやお味噌汁の具にすると、春のほろ苦い風味がします。

根からはでんぷん粉を取ることができ、わらび餅の材料になります。

コゴミは見た目はワラビによく似ていますが、アクが少ないので調理しやすく食べやすいのが特徴です。

新じゃがいも

春に出回る新ジャガイモは、皮が柔らかく小さく、秋冬のじゃがいもと違って歯ごたえがシャキッとしています。

春キャベツ

年中売られているキャベツですが、実は収穫時期によって品種が違います。

春キャベツは葉の巻き方がゆるく、水分たっぷりで柔らかいので、サラダや浅漬けにぴったりです。

木の芽(山椒の葉)

3月頃から芽吹く山椒の新芽はお料理にしゃれた味わいを添えてくれます。

手のひらに載せてパンっとたたけば、爽やかな芳香が立ち上ります。

山椒の新芽や柔らかい葉をすりつぶしてお味噌に合わせた「木の芽味噌」は和え物や田楽にオススメです。

春の行事や風物詩

京都の「十三詣」

子供の成長を祝う行事と言えば11月の七五三が有名ですが、京都では4月13日の「十三詣」も大切にされています。

知恵を司る虚空蔵菩薩の縁日に、13歳になった子供がお参りして福徳と知恵を授けてもらう行事で「知恵貰(ちえもらい)」という別名があります。

岐阜の「高山祭」

岐阜の高山祭

日本三大美祭の一つ、岐阜県高山市の春の高山祭は4月14日に開催されます。

飛騨の匠の技を集結した十二台の屋台を中心に、獅子舞や神輿など数千人規模の祭り行列が壮観な大祭です。

春のユニークな季語について

俳句を詠む趣味がなくても、季語を知っているとふとした事で季節が感じられて、楽しみが増えます。

あまり知られていないユニークな春の季語をいくつかご紹介します。

ボートレース

競艇は年中行われているのに、なぜ春の季語になっているのでしょうか。

それは桜の季節に隅田川で開催されるボートの早慶戦にちなんでいます。

早稲田大学の講師でもあった坪内逍遙の「当世書生気質」で記述されたのが季語の始まりと言われています。

イースター、カーニバルなど

イースター

20世紀に入ってからは外来の行事も季語になっています。

イースターはキリストの復活を祝うお祭りですが、同時に冬が終わり、動物が冬眠から目覚め、枯れていた草花がよみがえる春の到来を祝う行事でもあります。

玉子を鮮やかに彩色したイースターエッグを隠して探す場面を映画などで知った人も多いでしょう。2023年のイースターは4月9日です。

外来の行事では4月1日のエイプリルフールも春の季語になっています。

ぎんなんの花

銀杏は秋の代表的な季語ですが、4月頃に咲く「ぎんなんの花」は春の季語です。

鶴岡八幡宮の大銀杏をうたった句「銀杏の花や鎌倉右大臣」が有名です。

落第

春は卒業と入学の季節ということで、このふたつが春の季語に入っているのは納得がいきますし、有名です。

しかし落第まで春の季語になっているとはビックリです。

未来の希望にあふれた明るい季語のうしろで、ひっそりと「落第」も季語に仲間入りしてるとは、笑ってはいけない気もしますが面白いですね。

まとめ:二十四節気七十二候を知って季節をもっと楽しもう

日本古来の春の風物のお話、いかがでしたでしょうか。

季節感を感じにくい現代に暮らす私たちですが、季節と共に生きた昔の日本人の知恵と伝統を知ることで、生活を豊かに楽しんでみませんか?

またいつか、別の季節のお話もご紹介いたしますので、楽しみにお待ちください。

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