「豆」と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか?
「健康に良いけれど、食卓の脇役で地味…」といったところでしょうか。
確かに、豆は派手な食材ではありません。しかし、その栄養価の高さ、多彩な調理法を知っていくと、決して「地味」ではないことが分かります。
今回のコラムは食卓の脇役に回りがちな豆類が主役です。
意識せずに毎日食べている!日本は豆食大国
普段あまり気がつかないだけで、日本人は毎日たくさんの豆を口にしています。
味噌、醤油、納豆、豆腐、油揚げ、がんもどき、湯葉、きな粉、豆乳、枝豆などの大豆加工品。緑豆、大豆、黒豆などから作られる豆もやし、そして小豆から作られる和菓子のあんこ等々…。
むしろ豆加工品をまったく摂らない日がないくらいではではないでしょうか?
世界の大豆消費量ランキングでは日本は10位(2014〜2015年)なのであまり多く感じないかもしれません。しかし他国では食用とされる大豆がわずか1割なのに対し、日本では大豆消費の3割もが食用として使われています。
日本は、実は「豆食大国」なのです。
あなたはいくつ知っている?豆の種類と主な栄養

世界には数多くの種類の豆が存在します。ここでは、代表的な豆の種類とそれぞれの特徴を紹介します。
「畑の肉」と呼ばれる大豆をはじめ、小豆、ひよこ豆、レンズ豆など…。
多くの豆の中でも、代表的なものとその特徴をまとめてみました。
【大豆】
- 「畑の肉」と呼ばれるほどタンパク質が豊富。
- 豆腐、納豆、味噌、醤油など、日本の食卓に欠かせない食材。
- イソフラボンやレシチンなど、健康に良いとされる成分も豊富。
【黒豆】
- 大豆の一種で、皮が黒いのが特徴。
- アントシアニンが豊富で、抗酸化作用が高い。
- 煮豆や黒豆茶などに利用される。
【あずき】
- 赤くて小さな豆で、お祝い事や和菓子によく使われる。
- 食物繊維や鉄分が豊富。
- 利尿作用やむくみ解消効果も期待できる。
【ひよこ豆】
- ひよこの頭のような形が特徴的な豆。
- タンパク質や食物繊維が豊富で、低GI食品。
- カレーやスープ、サラダなどに使われる。
【レンズ豆】
- レンズのような形をした豆で、水で戻す必要がない。
- タンパク質や鉄分が豊富。
- スープや煮込み料理によく使われる。
【そら豆】
- 緑色で大きな豆で、独特の風味がある。
- タンパク質やビタミンB群が豊富。
- 茹でてそのまま食べたり、炒め物や揚げ物に使われる。
【えんどう豆】
- 緑色で小さな豆で、甘みがある。
- ビタミンCや食物繊維が豊富。
- グリーンピースとして、様々な料理に使われる。
世界の豆料理をご紹介
世界には多種多様な豆料理があり、その土地の文化や食習慣を反映しています。ここでは、代表的な豆料理をいくつかご紹介します。
中南米

フェジョアーダ (ブラジル)
ブラジルの国民食とも言えるフェジョアーダは、黒豆と豚肉や牛肉を時間をかけて煮込んだ料理です。
フリホーレス (メキシコ)
メキシコを代表するタコスは、トルティーヤ(タコスの皮)に肉や野菜を包んだ料理です。タコスに入っていることが多い金時豆のペーストがフリホーレスです。
ガジョピント (コスタリカ、ニカラグア)
ガジョピントは、豆とご飯を炒めた料理で、中南米の多くの国で食べられています。ちなみにガジョ・ピントとは斑の雄鶏という意味ですが、鶏肉は入っていません。
北米
チリコンカン (アメリカ)
チリコンカンは元々はメキシコなど中南米で食べられてた「チレ・コン・カルネ」が、アメリカ南部の郷土料理になったものです。
豆とひき肉、トマトなどをスパイスで煮込んだ料理で、単独で食べるだけでなくホットドッグのトッピングに使われたりもします。
ヨーロッパ

カスレ (フランス)
フランス南部の名物料理であるカスレは、白いんげん豆と肉(ソーセージ、鴨肉など)をじっくりと煮込んだ料理です。
ファバダ (スペイン)
スペインの北部アストゥリアス地方の郷土料理ファバダは、白いんげん豆と豚肉、チョリソーなどを煮込んだ料理です。
その他、スペインではひよこ豆(ガルバンソ)やレンズ豆を使った郷土料理がいくつもあります。
ボブチョルバ (ブルガリア)
ブルガリアの伝統的なスープであるボブチョルバは、白いんげん豆と野菜を煮込んだ料理です。
チョルバという言葉はかつてブルガリアを支配したトルコの言葉でスープを意味します。
ベイクドビーンズ (イギリス)
イギリスの朝食の定番であるベイクドビーンズは、白いんげん豆をトマトソースで煮込んだ料理です。
アフリカ

コシャリ(エジプト)
エジプトの国民食とも言える、米、パスタ、マカロニ、ひよこ豆、フライドオニオンなどが入った「エジプト版そばめし」がコシャリです。 トマトや玉ネギにクミンなどのスパイスを入れたソースで味付けします。
エジプトには他にも、そら豆をペースト状に煮込んだフールメダミスという料理があり、朝食の定番です。
ハリーラ (モロッコ)
モロッコの代表的なスープであるハリーラは、レンズ豆やひよこ豆、トマトなどを煮込んだスープです。
世界最小のパスタ「クスクス」に掛けて食べるのも美味です。
アジア

ダール (インド)
インドのカレー料理に欠かせないダールは、レンズ豆やひよこ豆などを煮込んだ料理です。
日本のインドカレー料理店ではダルカリーというメニュー名のことが多いです。
フムス (中東)
中東でよく食べられるフムスは、ひよこ豆をペースト状にし、ごまやレモン汁などを加えて作られた料理です。
フムスを丸めてコロッケにしたファラフェルも人気です。
家常豆腐(ジャーチャンドーフ、中国・台湾)
日本でもおなじみの麻婆豆腐の他にも、最近は家常豆腐もじわじわと人気が出ています。
厚揚げ豆腐や焼き豆腐を白菜や椎茸などの野菜と炒めてとろみを付けた料理です。
豆干絲(トウカンスー、中国・台湾)
中国及び台湾では、硬く作った豆腐を圧縮して乾かした豆腐干という乾物があります。
麺のように細く切ったものは豆干絲(トウカンスー)と呼ばれ、キュウリなどの野菜とごま油を使って和えた一皿はさっぱりして美味しいです。
これらの他にも、世界には数えきれないほどの豆料理があります。ぜひ、いろいろな国の豆料理を試してみてください。
豆食の歴史と未来
文明を支えた豆食
豆食の歴史は古代文明まで遡り、農耕文化を支える基盤として広がりました。
栄養価が高く保存もしやすい豆類は、エジプトやメソポタミアなどで栽培され、主食や保存食として利用されてきたのです。
日本の食文化を支える味噌と醤油

日本でも豆は縄文時代から食生活の一部として取り入れられてきました。
今では日本人の食卓に欠かせない味噌は、誕生した奈良〜平安時代には貴族が食べる高級品でした。
発酵によってアミノ酸やビタミンを豊富に含んだ味噌は、戦国時代になると戦陣食として重宝され、戦国武将が競って製造開発を進めたといいます。
現代に伝わる信州味噌は甲州の武田信玄が、仙台味噌は奥州の伊達政宗が推進して生まれたと言われています。
味噌と同じく伝来時には高級品だった醤油も、江戸時代の後期には庶民に普及し寿司、そば、蒲焼きなどの江戸料理に使われるようになりました。
日本の食文化は豆とは切っても切れないのです。
もう地味なんて言わせない!今後ますます注目される豆食

そして最近では健康志向の高まりやプラントベースの食事が広がりをうけて、豆食の栄養価が再評価されて世界中で熱い注目を集めているのです。
例えば、大豆製品はベジタリアンやビーガン食の基盤食品として欠かせないものとなり、ひよこ豆は海外の家庭料理やフムスとして愛されています。また、枝豆やレンズ豆はスーパーフードとして人気が高まり、お手軽に使える缶詰や冷凍製品も増えています。
日本では昔からあった高野豆腐や厚揚げを肉や魚に見立てる手法も、新たな視点で人気上昇中です。
一見地味に見えた豆は、栄養満点で健康効果も高く、様々な調理法で楽しめる万能食材でした。
今日はお豆で一品、いかがでしょうか?