反響のメールも多い人気コラム、aplodの学術顧問・医学博士の久保明先生が健康の情報と先進の医療について分かりやすく解説します!
「サイエンスは変化する」シリーズ第9回は「マルチビタミンと寿命」。誰しもが気になる寿命とビタミン摂取の関係についてのお話しです。
サイエンスは変化する Vol.9
医学博士:久保 明
マルチビタミンと寿命
今年(2024年)発表された日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性81.09歳でした。外来で多くの高齢の方々を診させて頂くと70歳、80歳に坂があるように思います。
マルチビタミン摂取は寿命に影響がない?
本年6月にJAMAネットワークオープンという国際的な医学雑誌に興味ある論文が掲載されました。
それは米国予防医学専門委員会(USPSTF)から発表されたもので3つの大規模長期追跡研究をまとめ、39万例を超える対象群における平均20年を超えるマルチビタミン使用者と使用していない者を比較した研究です。
その結果全死亡、心疾患死亡、脳血管障害死亡、がん死亡のいずれにおいてもマルチビタミン服用者で死亡率の低下は認められませんでした。
マルチビタミン研究に関する2つの疑問
ここで2つ疑問が生じます。
1つはマルチビタミンの内容(種類・摂取量など)が3つの研究で同じではないということです。さらに私たちの臨床研究(抗加齢ドックなど)でも各種ビタミンの血中濃度にはかなりの個人差がありました。
2つめはマルチビタミンを摂取する意味です。薬物ですら寿命を延長できるものはない現在、サプリメントがどこまで可能性を持っているのかはまだまだ未解決と思います。
久保個人はビタミンBやNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)などを摂取していますが、それは寿命延長というよりは体に必要な栄養を取り入れることによって生き生きとした人生を過ごしたいという思いが基本になっています。
気候変動はヒトのチカラを超えて進みつつあるようです。小さな存在である私たち自身の可能性を少しでも発揮できるようにしたいものですね。