前回はマイクロプラスティックが動脈硬化の意外な原因…という内容が大きな衝撃を呼んだ、aplodの学術顧問・医学博士の久保明先生の人気コラム!
「サイエンスは変化する」シリーズ第11回は「医療健康情報の遅れ」。医療情報の広まり方について留意すべき点などご紹介くださいます。
サイエンスは変化する Vol.11
医学博士:久保 明
医療健康情報の遅れ
先日一般紙が糖尿病の薬剤を伝える文章中で“画期的な糖尿病治療薬が登場した”…という表現を使っていました。
私たち現場のDrにとってはすでに日常臨床でも用い、さらに次の変化を把握しているのが現状ですので医療健康情報のタイムラグを感じる場面でもありました。
薬剤の新しい可能性によって生じる供給不足
その薬剤は“インクレチン関連薬”とも呼ばれますが小腸の細胞に働きかけて体内のインスリンを分泌させるものです。注射薬としては1週間に1回というタイプのものもあるため注目されています。
ただこれはインスリンとは異なることを把握しておかなければなりません。さらにその作用には満腹感の促進、食欲の抑制などもあるため保険適応外で肥満の治療に用いられてしまい薬剤が不足傾向になったことがあります。
世界的には多くの方々が悩まれる変形性膝関節症の方に1年半用いることで明らかに膝関節痛を軽減したという臨床研究が今年(2024年)10月のNEngJM誌に掲載されました。
有限な薬剤をいかに使用するか?という課題
薬剤が有する新しい可能性と糖尿病、肥満、変形性関節症などの疾患を有する方々に有限の薬剤をどのように使用するかはサイエンスが直面しつつある新たな問題といえます。
変化は新たな問題を生じせしめ、現場は対する個人としての患者さんへの最適な“解”を求める作業が続きます。