人気の連載、aplodの学術顧問・医学博士の久保明先生による、先進の医療と健康の情報を解説してくれる人気コラムです。
「サイエンスは変化する」シリーズ第7回は「肥満について」。
今回は、多くの現代人の関心である「肥満」の治療法、そして注目を集める飲み薬の成分についての話題です。
サイエンスは変化する Vol.7
医学博士:久保 明
肥満について
体重(㎏)をメートル表示の二乗で割った値(ボディマスインデックスBMI)が25以上の時に肥満(1度)と診断されます。
170センチ70キロの場合は70を1.7の二乗で割って約24ですね。この場合は肥満とは呼びません。もしこの値が25以上になった場合は数的には少ないのですがホルモンの異常や遺伝性などによる二次性肥満を除外します。
次に高血圧や糖尿病、変形性関節症などの健康障害があるかをチェックします。それらを伴っている時は“肥満症”として治療が必要となります。
肥満にはどんな療法がある
肥満は本来脂肪が過剰に蓄積した状態を呼びますが診断を容易にするためにBMIで診断するのです。
治療の原則はまず食事治療です。運動療法は肥満予防や肥満症に関連する死亡や心血管障害発症のリスクを下げますが、減量効果自体は食事療法が第一なのです。
ただ多くの受診者を診させて頂いているとそう簡単ではなく、リバウンドされる方も数多くいらっしゃいます。そんな時“肥満の飲み薬はないのですか?”と聞かれるのです。
糖尿業治療薬がやせ薬として使用できる?
実は今までも漢方の“防風通聖散”や保険が使える(使用条件は厳しいのですが)“サノレックス”(商品名)はありました。さらに最近になって脚光を浴びたのが、糖尿病治療薬のやせ薬としての使用と薬局で処方箋なしに手に入る“アライ”(商品名)です。今回は後者について要点をお伝えします。
米国では1999年にすでに認可されていた「オルリスタット」という脂質の吸収を抑える成分です。
注意するのはおなかの脂肪だけを減らすわけではない点、そして服用後ひとによっては便失禁のような状態がおこることです。
報告によって差はありますが数か月で3%かそれ以上体重が減るとされています。一方2型糖尿病発症をかなり抑制するとされていますので“糖尿病予備軍”などといわれている方には適しているかもしれません。
脂溶性ビタミンであるビタミンA,D,E,Kなどはサプリメントとして少し補う必要もありそうです。