aplodの学術顧問・医学博士の久保明先生が先進の医療や健康の情報を分かりやすく解説するコラムをお届けします。
「サイエンスは変化する」シリーズ第3回は「認知症をめぐって」。
最近注目されているアルツハイマー病の治療薬や症状について、TVや新聞の報道であまりふれられない注意点を解説しています。
サイエンスは変化する Vol.3
医学博士:久保 明
認知症をめぐって
認知症の60%以上を占めるとされているアルツハイマー病の治療薬が認可されるということで、外来でも“いつから使えるのでしょうか?”と聞かれることもあります。
新薬は果たしてアルツハイマー病の救世主か?
久保の外来は認知症専門ではないので、わからないことも少なくありません。そういう時には、認可を後押しした論文を読んでみることにしています。
この薬剤はアルツハイマー病の患者さんの脳内に蓄積したアミロイドβと呼ばれるたんぱく質を取り除く抗体なのですが、最近幾つか開発されたものに関する研究を紐解くと、必ずしもその効果が高いとは言えないことが理解できます。
さらにその薬剤は静脈注射で投与され、脳内のむくみなどを起こすことがあると記述されています。
情報をうのみにせず幅広く学ぶことが大切
SNSが発達した現在だからこそ医療・健康領域に生きる私たちには情報をうのみにしない姿勢が求められます。
いずれにしても今までは神経伝達を円滑にする機序の薬しかなかったのですから進歩と言えるのかもしれません。
一方ではマルチビタミンが高齢者の認知能の改善にはたらくという研究や、地中海食を用いた研究も今年報告されています。
サプリメントは効かないと簡単に片づける前に幅広い情報を真摯に学ぶ必要があると思います。
認知症の「積極的物忘れ」とは?
さらに最近では認知症の代表的症状である“物忘れ”についても最新研究が進められ、新しい記憶を取り込むための積極的物忘れというものが注目されています。神経細胞においてRac1という物質がその本体なのです。
私たち臨床家は眼の前の受診者の物忘れがこの積極的物忘れか否かを鑑別することになります。
サイエンスは常に変化しているのです。
いかがでしたでしょうか?
ここでしか読めない久保明先生のコラム、次回もご期待ください。